最終更新日:2026/9/14 公開日:2026/9/14

LangChainの仕組みと主要機能を徹底解説【読み方・LangGraphとの違い】導入事例からできることまで

技術ブログ


LangChainという名前を目にしたものの、何ができるツールなのか、他の技術とどう違うのか判断がつかない、という方は多いのではないでしょうか。LangChainは大規模言語モデル(LLM)を使ったアプリケーション開発を効率化するオープンソースのフレームワークです。本記事では、基本定義から主要機能、LangGraphとの違い、実際の企業導入事例、自社に向いているかの判断基準まで、体系的に解説します。


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LangChainとは何か【読み方と基本定義】

  • 読み方:ラングチェーン
  • 公開時期:2022年10月、Harrison Chase氏が公開
  • 対応言語:Python、JavaScript/TypeScript
  • 位置づけ:LLM自体ではなく、GPTやClaude、Geminiなどの既存LLMを社内文書・外部API・検索エンジンなどと接続し、チャットボットやAIエージェントへと組み立てるための「道具箱」

LLM単体では対応しきれない複雑な統合処理を、あらかじめ用意されたコンポーネントの組み合わせで効率化するためのフレームワークで、ビジネス活用からプロトタイピングまで幅広い場面で採用が進んでいます。


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LangChainが必要とされる理由|LLM単体の限界

ChatGPTのようなLLMは非常に高い文章生成能力を持つ一方、単体で使うと次の3つの限界に直面します。

  • 記憶がない:会話のたびに文脈がリセットされ、前のやり取りを踏まえた対話ができない
  • 外部データを参照できない:学習データに含まれない社内文書や最新情報には答えられない
  • 複数の処理を自律的に組み合わせられない:検索・計算・API呼び出しなど複数ステップの処理を、状況に応じて自分で判断し実行できない

LangChainはこれら3つの限界を補うために生まれたフレームワークであり、単なる利便性向上ではなく、LLMを実務で使えるレベルに引き上げるための必須のレイヤーとして位置づけられています。

LangChainの主要機能・コンポーネント一覧

LangChainは複数のコンポーネントを組み合わせて使う設計になっており、代表的なものは大きく次の5つに分類されます。それぞれ独立して機能しつつ、組み合わせることでより高度なアプリケーションを構築できます。

機能名役割主な活用シーン
Model I/O複数モデルの入出力を統一インターフェースで管理モデルの比較検証、乗り換え
Retrieval外部データを検索してAIに参照させる(RAG)社内問い合わせ対応、文書検索
Memory会話履歴を保持し文脈を維持するチャットボット、カスタマーサポート
Chains複数の処理ステップを連結する文書の分割要約、多段階処理の自動化
Agents状況に応じてツールを自律的に選択・実行する業務自動化、複雑なタスク処理

それぞれの機能について、もう少し詳しく見ていきます。

多様な言語モデルの入出力を統一インターフェースで扱う|Model I/O

役割:OpenAI・Anthropic・Googleなど提供元の異なるモデルを、共通のインターフェースで呼び出せるようにする機能です。

モデルを切り替える際にコードを大きく書き直す必要がなく、プロンプトのテンプレート化や、モデルが返したテキストをJSONなど構造化データへ変換する仕組みも含まれています。複数のモデルを比較検証しながら開発したい場合や、将来別のLLMへ乗り換える可能性がある場合に有効です。

外部データベースや社内文書を検索してAIに参照させる|Retrieval

役割:社内文書やPDF、データベースなど、LLMの学習データに含まれていない外部情報を検索し、回答生成時の参照情報として渡す機能です。

文書をベクトルデータベースに保存し、ユーザーの質問に関連する箇所だけを検索・抽出してプロンプトに渡す、という流れで動作します。この仕組みはRAG(検索拡張生成)と呼ばれ、社内問い合わせ対応や製品マニュアル検索、専門文書のQ&Aなど、自社固有の最新情報に基づく回答が必要な場面で広く活用されています。

過去の対話履歴を記憶して文脈を維持する|Memory

役割:それまでの会話ややり取りの履歴を保持し、後続の処理で再利用できるようにする機能です。

すべての会話をそのまま保持する方式や、長くなった履歴を要約してトークン消費を抑える方式など、用途に応じて複数の実装が用意されています。一度伝えた内容を踏まえて会話を続けられるため、単発の質問応答だけでなく、複数回のやり取りを前提とするカスタマーサポートとの相性が良い機能です。

複数の処理ステップをパイプラインのように連結する|Chains

役割:複数の処理ステップを一つの流れとして連結する、LangChainの中核的な機能です。

あるプロンプトの出力を次のプロンプトの入力として渡す、といった処理を順番に実行できます。現在はLCEL(LangChain Expression Language)という記法が推奨されており、長文を分割してそれぞれ要約し、最後に統合する、といった多段階処理を組み立てることが可能です。

状況に応じて外部ツールを自律的に選択・実行する|Agents

役割:LLMが「どのツールをどの順番で使うか」を自律的に判断し、実行する機能です。

ReAct(推論と行動を繰り返す手法)と呼ばれる仕組みを採用し、情報を調べる・計算する・結果を整形して返す、といった複数ステップを状況に応じて自分で組み立てて実行します。Web検索や社内API、データベースなどをToolとして登録しておくことで、必要に応じて呼び出せるようになります。


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LangChainとLangGraphの違い|チェーン型かグラフ型か

  • LangChain:部品を一直線に近い形で連結し、比較的シンプルな処理フローを組み立てるのに向く
  • LangGraph:処理の流れをグラフ構造で表現し、条件分岐・並列処理・複数エージェントの協調など複雑なフローの管理に向く

なお、LangGraphはLangChainの上位互換ではなく、より複雑な処理を組むための拡張と捉えるのが適切です。

LangChainの導入事例|国内外の企業3選

規模も業種も異なる3つの事例を通じて、実際にどのような課題解決に使われているのかを見ていきます。

Cisco|LangGraphで構築したマルチエージェント型カスタマーサクセス基盤

URL:https://www.cisco.com/

  • 課題:カスタマーサクセス領域における複雑な顧客対応フローの管理
  • 解決策:LangGraphを活用し、役割の異なる複数エージェントを連携させるマルチエージェントシステムを構築
  • ポイント:単一チェーンでは対応しきれない条件分岐・並列処理を、グラフ構造で管理している点が特徴

JPモルガン・プライベートバンク|投資リサーチを自動化するマルチエージェントAI「Ask David」

URL:https://www.jpmorgan.com/

  • 課題:投資リサーチ業務における膨大な投資商品データの管理と、手作業プロセスの負荷
  • 解決策:LangChainとLangGraphを用いたマルチエージェントAI「Ask David」を開発し、情報収集・分析・レポート作成を自動化
  • ポイント:高い正確性が求められる金融機関でも、マルチエージェント構成が実用段階にあることを示す事例

くすりの窓口|RAGを活用した問い合わせ対応チャットボット

URL:https://kusurinomadoguchi.co.jp/

  • 課題:問い合わせ内容の多様化により、回答品質が担当者ごとにばらつく
  • 解決策:LangChainのRetrieval機能を用いたRAG構成のチャットボットを導入し、プロジェクト開始から約1ヶ月でPoC検証環境を構築
  • ポイント:中堅企業がスモールスタートでLangChainを実務に取り入れた例として参考になる

自社にLangChain導入が向いているかの確認ポイント

導入を検討する際は、次の3点を確認しておくと判断がしやすくなります。

これらに1つでも当てはまる場合は、導入を検討する価値があるといえます。

まとめ

LangChainは、LLM単体では補えない「記憶」「外部データ参照」「複数処理の連鎖」という弱点を解消し、RAGやAIエージェントといった実用的なアプリケーションを効率的に構築できるオープンソースフレームワークです。より複雑なマルチエージェント構成が必要になれば、LangGraphへの発展も視野に入ります。


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