あらゆるビジネスシーンで活躍! Cloud Run のユースケース 8 選
技術ブログはじめに
コンテナ運用を効率化するためには、 Cloud Run が有効なサービスの一つになります。実際に多くの企業が Cloud Run を活用し、自社の業務効率化や生産性向上に繋げています。
Cloud Run とは、 Google のパブリッククラウド「 Google Cloud 」に内包されているサービスであり、フルマネージドで提供されているコンテナの実行環境です。なお、コンテナとはアプリケーションや設定用ファイル、ライブラリなどを OS 上にまとめたものを意味します。
なお、 Cloud Run でコードを実行する際には、
- Cloud Run サービス
- Cloud Run ジョブ
という 2 種類から好きなものを選択して利用できます。本記事では、 Cloud Run の具体的な 8 つのユースケースと組み合わせて使用できる Google Cloud サービス、活用の注意点を一挙にご紹介します。 Cloud Run の導入を検討されている方は、ぜひ最後までご覧ください。
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目次
Cloud Run のユースケース 8 選
本章では、 Cloud Run のユースケースを 8 つに厳選してご紹介します。自社で Cloud Run を活用する際の参考になると思いますので、ぜひ内容を理解しておきましょう。
バッチジョブと非同期処理の実行
Cloud Run は、バッチ処理や非同期ジョブの実行に適したプラットフォームです。
バッチ処理を行う際には、 Cloud Run のコンテナを使用してスケーラブルに処理を実行できるため、処理の大規模な並列化やリソースの効率的な利用が可能になります。例えば、大規模なデータセットをもとにした複雑なレポート作成などを Cloud Run のバッチ処理で効率化できます。
また、非同期処理を行う場合には、 Cloud Run のイベント駆動型の性質を活用することにより、必要なトリガーに応じた処理を設定できます。そのため、 SNS ログ(ユーザー投稿)のリアルタイムな分析など、リアルタイム性の高い処理や、外部のイベントに対するリアクションを容易に実現することが可能です。
イベント駆動型ワークフローの実行
イベント駆動型のワークフローとは、特定のイベントが発生した際に、自動的に特定の処理を実行してくれる仕組みのことです。そして、 Cloud Run を使えば、イベント駆動型のワークフローをシームレスに実行できます。
例えば、 Cloud Run を Pub/Sub ( Google Cloud のメッセージングサービス)や Google Cloud Storage ( Google Cloud のストレージサービス)などのイベントソースと統合することで、イベント駆動型のアプリケーションを開発可能になります。これにより、イベント駆動型のアーキテクチャを構築でき、柔軟性の高いシステム構築に繋がります。
具体的な利用シーンとしては、ログ監視・アラートの仕組みの実装や、ファイルがアップロードされた時の自動処理などが挙げられます。また、 EC サイトでの注文完了イベントをトリガーとして設定すれば、 Cloud Run で注文確認メールを自動送信したり、在庫管理システムを自動更新したりするような使い方も考えられます。
マイクロサービスアーキテクチャに基づいたアプリケーション開発
Cloud Run は、マイクロサービスアーキテクチャに基づいたアプリケーション開発にも適しています。マイクロサービスを個々のコンテナとして展開することで、それぞれのサービスを独立してスケーリングし、管理することができます。
マイクロサービスの具体例としては、
- 画像処理マイクロサービス:ユーザーがアップロードした画像に対して、特定の処理(リサイズ、フィルター処理、顔検出など)を行う
- データ処理マイクロサービス:ログデータやセンサーデータなどの大量のデータを処理して集計・分析を行う
- API ゲートウェイとしてのマイクロサービス:複数の内部マイクロサービスに対して統一された API インターフェースを提供する
などが挙げられます。
そして、 Cloud Run を活用すれば、これらをマイクロサービスとして独立的にデプロイ・スケーリング可能になります。また、マイクロサービス化することで、複数のサービスを仕組みとして使い回せるようになるため、ログから取得したデータを画像処理マイクロサービスにわたして自動処理を行うなど、マイクロサービス間の連携自動化にも繋がります。
なお、 Cloud Run でマイクロサービス間の通信を実装するためには、 gRPC や RESTful API などが用いられます。 gRPC はマイクロサービス間やクライアント・サーバー間の通信を行うためのオープンソースのフレームワークであり、効率的にデータをやり取りできる点が特徴です。また、 RESTful API は Web アーキテクチャの設計原則の一つであり、リソース(ユーザー情報や商品情報など)を一意の URI ( Uniform Resource Identifier :統一資源識別子)で識別し、 HTTP メソッド( GET 、 POST 、 PUT 、 DELETE など)を使って、そのリソースに対する操作(取得、作成、更新、削除など)を行う仕組みのことです。
加えて、 Cloud Run はコンテナベースのアプリケーションをホストするためのサーバーレスなプラットフォームです。そのため、自社によるインフラ管理が不要な点も大きな魅力となっています。
このように、マイクロサービスアーキテクチャに基づいたアプリケーション開発を行う場合には、 Cloud Run が有効な選択肢の一つになると言えるでしょう。
サーバーレス CI / CD パイプライン
Cloud Run を使用することで、サーバーレスな CI / CD パイプラインを構築することができます。なお、 CI / CD パイプラインとは、継続的インテグレーションと継続的デリバリを組み合わせ、コーディングやテスト、展開などのソフトウェアのデリバリを自動化するものです。
開発者はコンテナイメージをビルドすることで、 Cloud Run にデプロイするためのパイプラインを設定できます。これにより、アプリケーションの変更を素早く反映し、迅速なデプロイメントを実現することが可能なほか、 Cloud Run のサーバーレスな性質により、リソースの効率的な利用やコストの最適化にも直結します。
システムの負荷分散の実現
Cloud Run はサービス単体でもシステムの負荷分散を実現することが可能であり、シンプルで使いやすい操作性やコスト効率、サーバーレスで提供されている点などがメリットとして挙げられます。そのため、小規模なアプリケーションや単一リージョンでの運用、シンプルな負荷分散要件などに該当する場合は、 Cloud Run 単体の負荷分散で問題なく運用することが可能です。
また、 Cloud Run は Cloud Load Balancing ( Google Cloud に搭載されている負荷分散サービス)と連携することで、さらに高度な負荷分散を実現できます。 Cloud Load Balancing との連携により、グローバルな負荷分散やヘルスチェックの拡張、静的 IP アドレスの割り当てなどが可能になるため、大規模な Web アプリケーションや複数リージョンでの運用、複雑な負荷分散要件にも対応できるようになります。
なお、一般的なロードバランサーでも負荷分散を行うことは可能ですが、自動スケーリングの機能が完全には自動化されていないことがあります。加えて、基盤となるインフラストラクチャの設定・管理が必要であり、特定のプラットフォームに依存する可能性があるため、手間なく効率的に負荷分散を行うためには、 Cloud Run が有効な選択肢になると言えるでしょう。
Cloud Run と組み合わせて利用できる Google Cloud サービス
Cloud Run は単体でも便利なサービスですが、他の Google Cloud サービスと組み合わせることで、さらなる利便性向上に繋がります。本章では、 Cloud Run と組み合わせて利用できる Google Cloud サービスを 3 つご紹介します。
Cloud Build
Cloud Build とは、サーバーレスで提供されている Google Cloud の CI / CD サービスです。 実行したいステップを YAML (ヤメル:プログラミング言語の一種)で定義することで、コンピューティングサービスに対するビルドやデプロイなどを実行できます。
そして、 Cloud Run には Cloud Build と統合するための機能が搭載されており、 Git リポジトリを指定すれば、 Cloud Build によるビルドやデプロイ構成などを自動でプロビジョニングすることが可能になります。このように、 Cloud Run と Cloud Build を組み合わせて使うことで、 CI / CD パイプラインの効率的な構築に繋がります。
Cloud Storage
Cloud Storage とは、 Google Cloud に搭載されているストレージサービスです。この Cloud Storage と Cloud Run を組み合わせれば、様々なシーンで便利に使えるようになります。
例えば、 Cloud Run のコンテナ環境を利用することで、 Cloud Storage に保存されているデータをリアルタイムで処理するアプリケーションを作成できます。具体例としては、画像処理アプリケーションやデータ解析ツールなどが該当します。
また、 Cloud Run アプリケーションが処理したデータやユーザーからのアップロードを Cloud Storage に保存することで、データの安全性や永続性、スケーラビリティの確保に繋がります。
Cloud Functions
Cloud Functions とは、 Google Cloud で提供されているサーバーレスコンピューティングサービスであり、指定したイベントを契機に関数を実行できます。前述した Cloud Storage と同様、 Cloud Functions を Cloud Run と組み合わせることで、自社の業務効率化や生産性向上に繋がります。
例えば、 Cloud Run と Cloud Functions を組み合わせることで、複雑なワークフローを効率的に構築することが可能になります。例えば、 Web フォームからのデータ受け取りを Cloud Functions で処理し、その結果を Cloud Run に渡すような使い方が考えられます。
さらに、 Cloud Run から Cloud Functions を呼び出すことで、特定のイベントや条件が発生した際に処理をトリガーできます。これにより、新しいデータがストレージへアップロードされた時に、そのデータを処理するための Cloud Function を呼び出すなど、より柔軟な運用を実現可能になります。
なお、 Cloud Run と Cloud Functions は、どちらもジョブを効率的に実行できる点は共通していますが、厳密には様々な違いが存在します。例えば、 Cloud Run はコンテナ単位でジョブを実行するのに対して、 Cloud Functions は個別の関数単位での実行になります。また、両サービスとも自動スケーリングの機能が搭載されていますが、 Cloud Functions の方がより細かい粒度でスケールできます。
加えて、 Cloud Functions は短時間(イベントドリブン関数の場合は最大 540 秒)の処理に最適化されていますが、 Cloud Run はさらに長時間の処理が可能になります。このように、 Cloud Run と Cloud Functions はそれぞれ異なる特徴を持っているため、自社の状況に合わせて、適切に使い分けることが大切です。
Cloud Run の活用事例
企業向けの各種 IT サービスを展開する Sansan 株式会社では、インボイス管理サービスである Bill One を提供しており、そのオプションサービスとして位置付けられる「 Bill One ビジネスカード」の開発・運用インフラに Google Cloud を採用しています。
Bill One ビジネスカードとは、アップロードされた証憑と利用明細を自動で照合し、金額が異なる場合にアラートを表示する機能の付いた法人向けクレジットカードです。カード決済後は利用者に対して証憑提出の依頼メールを自動で配信してくれるため、証憑の回収からチェックまでの一連のプロセスを自動化できます。
そして、このサービスの開発・運用インフラとして Google Cloud が選ばれた理由は、
- 運用負荷を低減して開発に集中する
- マルチクラウドを推進する
- 先進技術にチャレンジする
の 3 点であり、これらを実現するための手段として、 Cloud Run を導入・活用したのです。
インフラの基本構成としては、Web アプリケーションファイアウォール( WAF )とロードバランサーの後ろに Backends For Frontends ( BFF :フロントエンドのために API をコールしたり、 HTML を生成したりするサーバー)があり、その後ろに Cloud Run によるバックエンドサービスが並ぶ構成となっています。
また、各サービスがマイクロサービスとして構成されており、サービス間は非同期の連携になっているため、それぞれがデータベースを保有している点が大きな特徴です。そして、カードサービスの処理は Cloud SQL 、ペイメント処理は AlloyDB 、細かな部分は Cloud Functions 、ストレージは Cloud Storage など、シーンや用途に合わせて、様々な Google Cloud サービスを使い分けて運用しています。

インフラ部分に Cloud Run を採用することで、エンジニアの運用負荷の低減を実現しただけでなく、 Cloud Run に搭載されている自動スケーリングの機能により、突発的な処理の増加にも対応できるようになりました。さらに、 Cloud Run を AlloyDB と組み合わせて使うことで、高い可用性を実現でき、ダウンタイムの低減にも繋げています。
結果として、 Bill One ビジネスカードの開発には約 30 名のエンジニアが参加しましたが、開発作業の開始からわずか半年間という短い期間で本番リリースを迎えることができました。また、リリース後もシステムは問題なく安定稼働しており、社員がアプリケーション開発に集中できる環境整備に繋がっています。
このように、新サービスの開発・運用に Cloud Run を活用し、自社の業務効率化や生産性向上を実現した好事例だと言えるでしょう。
Cloud Run を利用する際の注意点
Cloud Run はとても便利なサービスですが、利用時に注意すべきポイントがいくつか存在します。本章では、 Cloud Run を利用する際の注意点を 3 つご紹介します。
状況に合わせて使うサービスを選択する
Google Cloud には、 Cloud Run 以外にも様々なコンピュートサービスが存在します。以下、代表的なサービスを表にまとめます。

このように、サービスごとに特徴やユースケースは異なるため、自社の状況に合わせて最適なものを選択することが大切です。 Cloud Run の利用が適しているユースケースは前章でご説明していますので、確実に内容を理解しておきましょう。
なお、特定のサービスのみを使うのではなく、組み合わせて利用するハイブリッドアプローチも有効な選択肢になります。例えば、カスタム設定が必要なデータベース( MongoDB など)を Google Compute Engine で運用し、フロント部分に Cloud Run を活用するなど、複数サービスを組み合わせることで、利便性をより向上させることができます。
セキュリティ強化のための工夫を施す
Cloud Run をビジネスで利用する場合には、セキュリティの強化を忘れてはいけません。セキュリティを疎かにした場合、自社の貴重なデータが消失・漏洩してしまうリスクがあります。
例えば、各種認証やアクセス制限、 VPC 連携など、 Cloud Run を安全に利用するためのセキュリティ対策を実施してください。これにより、様々なリスクを低減し、安心して Cloud Run を使うことができます。
事前にコストシミュレーションを行う
Cloud Run は使用量に応じて料金が変動する従量課金制を採用しています。そのため、無計画にサービスを使い続けた場合、想定外の高額請求が発生する可能性があります。
これを防ぐためには、事前に使用リソース量を見積もり、発生料金をシミュレーションしておくことが大切です。また、 Google Cloud には利用料金が一定額に達した場合に、ユーザーに対して自動通知(アラート)を送る「予算アラート」という仕組みが用意されているため、コストが不安な方は積極的に活用するとよいでしょう。
まとめ
本記事では、 Cloud Run の基礎知識や利用時の注意点を解説しつつ、具体的な 8つのユースケースを一挙にご紹介しました。企業が Cloud Run を活用することで、イベント駆動型ワークフローの実行や機械学習モデルのデプロイなど、様々なユースケースに対応できます。この記事を読み返して、具体的な内容を理解しておきましょう。